2024/02/25 SUIREN Major 1st EP「Reverse」Release Party
『SUIREN Major 1st EP「Reverse」Release Party』
日時:2024年2月25日(日)
18:30 OPEN / 19:00 START
会場:Spotify O-nest
出演:SUIREN
ゲスト出演:CIVILIAN / Hello Sleepwalkers
photo by:きるけ
-set list-
OP SE
1. Eye Shadow
2. stella
3. 喰う虚(from EP『Replica1』)
4. Arcle
5. 黎-ray-
Inter. 白雨
6. Squalling
7. レプリカ
8. room
▼Live Movie Short(YouTube PLAYLIST)
▼Spotify PLAYLIST
▼Skream! レポートページ
https://skream.jp/news/2024/03/suiren_livereport.php
-Official Report-
2024年2月25日(日)東京・渋谷はSpotify O-nestにて、ヴォーカル・Suiとキーボード/コンポーザー・Renによる気鋭の音楽ユニット・SUIRENがメジャーデビュー後初のEP発売を記念したリリースパーティー「SUIREN Major 1st EP「Reverse」Release Party」が開催された。
10年以上日本のバンドシーンを牽引しているHello Sleepwalkers、CIVILIANの2組をゲストに迎えたスリーマンライブで構成。中でもSUIRENのライブは数年振りとなるフルバンド編成。サポートメンバーにハルカ(Gt.)、西塚真吾(Ba.)、伊藤彬彦(from androp/Dr.)が参加し、SUIRENの音楽をより華やかに彩った。
本記事では、本公演のSUIRENのライブパートをレポートする。
Hello Sleepwalkers、CIVILIANの2組がそれぞれの個性を全面に出しながらフロアを沸かせたのち、本日の主役であるSUIRENが登場。
1曲目はEP『Reverse』をリードする楽曲『Eye Shadow』。SUIRENの楽曲の中でも強く激しく、とにかくRenのピアノが映えるロックナンバーだ。1月24日にリリースされたばかりのEP楽曲はもちろん初披露となったが、地響きのようなキックに合わせてフロアは徐々に縦に揺れていく。タイトルや歌詞に散りばめられた“Eye=目”を象徴するかのごとく、Suiはフロア一人一人の目に自身の声を合わせていくようだった。
会場をSUIRENの色で色濃く染めた会場が煌めいたのは2曲目『stella』。ゲーム『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』メインテーマソングとして昨年11月にリリースされた楽曲だがバンド編成での披露は初。Suiのロングトーンを刻むような鋭いRenのピアノがどこか神々しく、慈しみすら感じる。さっきまで揺れていたフロアからは仰ぐような手が上がり始める。大サビ前の“何かが溶けていったんだ”にはSuiの歌声の真骨頂である“儚い”が詰め込まれていた。
MCを挟んだ3曲目はインディーズ時代にリリースしたEP『Replica1』より『喰う虚』。突如としてインターネットシーンに現れた彼らの名を押し上げた楽曲のひとつだ。ジャジーなビートに飲み込まれたフロアからは自然に手拍子が生まれる。ライブハウスだからこそ生まれるグルーヴィーな空気からは、SUIRENの楽曲の振り幅を見せつけられたと言える。
続いてもインディーズ時代のラインナップから『Arcle』。80年代を代表するシンセポップバンドを彷彿とさせるような明瞭なビートに、今度は細かく身体が揺れる。ビートに対比するのはRenの透明度の高いピアノの音色だ。Suiの歌声は他の楽曲と比べて高音が多くないからか言葉に忠実な印象を受ける。故に体に染み込んでくるような音楽だった。
5曲目はメジャーデビューシングル『黎-ray-』。カジュアルに揺らした前2曲と打って変わって、歪(ひず)みや力強さにあてられる。TVアニメ『キングダム』第4シリーズオープニング・テーマとして制作された本楽曲は、まさに歴史を謳う重く深い雰囲気だった。“命を燃やし尽くせ”と歌詞にあるように、Suiの歌声は儚くも強くまっすぐで、Renのピアノは空気を切り刻むようで、“翳せ その手を天へ”と歌うサビ前、フロアからは導かれるように手が上がっていた。Renが最後の1音を奏でる時、さっきまでその熱に当てられていたフロアはステージから目を離せずにいた。
間髪入れずにEP『Reverse』よりインストナンバー『白雨』が続く。鍵盤に感情を乗せる情緒的なRenのピアノの音色にフロアは息をのむ。言葉なくして音だけでこの感情を込み上げさせるのは流石としか言えない。目頭と鼻先が熱くなってきた頃、スッと入り込んできたピアノの音色から始まったのは同じくEP『Reverse』より『Squalling』。本公演当日はあいにくの雨模様。ただ、それすらも味方にするようなセンチメンタルなパフォーマンスは、Suiが歌いながら目線や手振りを使ってより増長させていた。「Squalling」は日本語で<強い風や雨が大音量で吹く>という意味だが、それはまさに降り注ぐ音や言葉の雨にも打たれたこの日の我々を投影しているかのようで、当日の音や振動、興奮が“今も耳に残って離れない”ライブの翌日までも歌っているかのようだ。
「この曲は存在証明—」そうSuiが放って始まったのはインディーズ時代のEP『Replica2』から『レプリカ』。我々は今「この曲を伝えられている」んだ、そう思い込むほど強く訴えかけられるようなパフォーマンスだった。“僕が僕であるために”“君が君であるために”そう歌いながらフロアを端から端まで指をさしてSuiはその言葉を伝える。それに頷くように、その言葉を身体に叩き込むようにフロアは再び縦に揺れる。メッセージを受け取ったひとりひとりが手を叩く。我々は確かにここに存在することをSUIRENは今日も証明してくれた。
ここまで7曲を彩ったサポートメンバーがステージから退場すると、原点ともいえるSuiとRenでのMCパートが少し長めに設けられた。合間に少しずつ設けられていたMCでも感じられたが話すととてもカジュアルな2人。たまに起こす笑いも楽曲をより引き立たせるためのエッセンスだといえよう。本公演をゲストとして盛り上げたHello Sleepwalkers、CIVILIANを「往年の猛者」と讃えたRenは、結成4年目を間も無く迎えようとするSUIRENのことを「まだまだ若手だ」と鼓舞し、「ひとつひとつ丁寧にこれからも音楽を紡いでいく」と続けた。Suiは「久しぶりに作品集として、SUIRENの名刺代わりになるような新しいEPをリリースできた。音楽は誰かの前で披露して初めて完成するので、このリリースパーティーが開催できて嬉しい」とコメント。
SuiとRenはお互いの言葉を終えると結びに「またどこかで必ず会いましょう」と未来を約束し、当日最後の楽曲「Room」をMCに続きSuiとRenの2人で披露。
「楽曲を作る時の小さな部屋をイメージして作った(Sui)」とした本楽曲では、ここまで激しく揺らしたロックナンバーとは対照的な、静寂すらも奏でるものだった。照明に反射したアクセサリーまでもが嫋やかで優しい2人のパフォーマンスを際立たせる。途中目を合わせて演奏する姿はとても印象的でSUIRENの生い立ちを感じることができた。SUIRENは各々の音楽活動があったから生まれたユニットであるが故にお互いを心からリスペクトしあっていているからこそ間違いなくお互いを引き立たせあっている。それがSUIRENのアコースティック編成(SuiとRenの2人体制で行うパフォーマンスのこと)からはひしひしと感じる。“ありがとうも好きだよも涙さえも歌になる”この一節にSUIRENの音楽の可能性を無限に感じることができた。
SUIRENの音楽の魅力は、言葉を伝える最適解の音楽であることだと筆者は思う。彼らの音楽にある「余白」こそが彼らの音楽を引き立たせる最高の楽器だ。Suiの繊細で儚い声は聴き手に最も近い浸透圧のようなもので染み込み、Renのドラマティックなピアノはノイズすらももろともしない空気を作り出す。SUIRENの音楽を聴く前と聴いた後で踏み出す一歩は全く違うものである。
2024年、早くも春からのイベント出演ツアーが解禁され始めたSUIRENは幾多のパフォーマンスを経てきっとまた大きく進化してくれるだろう。MCで2人と約束した「また必ずどこかで」を胸に、日本の音楽シーンという大海原で再び邂逅できることを期待したい。
(text by 高梁 渚)